結論:弊社の面談記録では、引っ越しの可否が残っている1,201名のうち894名(74%)が「引っ越しOK」でした。宿泊・飲食の仕事を希望する方に絞っても75%です。ただし、希望勤務地に地方の県や「どこでも」を挙げた方は約3割にとどまり、引っ越しOKの方でも6割は都市部を希望に書いていました。地方の旅館・ホテルは「来てもらえない」のではなく、「選ぶ理由が求人から読み取れない」ことが多い、というのが今回の記録から見えたことです。

「駅から車で1時間近くかかって、冬は雪も積もる。そんな場所に、本当に来てくれる人はいるのだろうか」——山あいの温泉旅館や、地方のリゾートホテルの採用ご担当者から、よくいただくご相談です。

弊社では面談のたびに、「内定が出たら引っ越しはできますか」「希望の勤務地はどこですか」「寮がなくても大丈夫ですか」といった同じ項目をうかがい、記録に残してきました。今回はその記録を数え直して、地方で働く気持ちがどれくらいあるのか、何があれば来てもらえるのかを整理しました。制度の解説ではなく、弊社の面談記録から分かったことだけを書いています。

1. 何を数えたのか

弊社の面談メモには、毎回同じ項目をうかがって書き込む決まった欄があります。今回使ったのは、そのうち次の4つです。

  • 引っ越し:内定が出たら、その場所へ引っ越せるか
  • 希望勤務地:働きたい地域
  • 寮:寮がなくても大丈夫か
  • 免許:車の運転免許があるか

対象は、弊社の社内システムに登録されている2,464名分の面談記録(2023年〜2026年10月)です。欄が空いている方は除き、答えが書かれている方だけを数えています。項目ごとに答えが残っている人数が違うため、表ごとに「何人のうちか」を書いています。

2. 74%が「引っ越しOK」だった

まず、「引っ越し」の欄に答えが残っていた1,201名の内訳です。

引っ越しの答え人数割合
引っ越しOK894名74.4%
地域を限ればOK(「東京のみ」など)26名2.2%
引っ越しは難しい195名16.2%
どちらとも読み取れない86名7.2%
合計1,201名100%

4人に3人が、引っ越して働くことをOKと答えていました。「引っ越しは難しい」は6人に1人です。

宿泊・飲食の仕事を希望している方(または経験がある方)に絞っても、答えが残っている805名のうち608名(75.5%)が引っ越しOKで、全体とほとんど変わりません。年ごとに見ても69%〜81%の間で、特定の年だけ高いということもありませんでした。いま転職活動中の方に絞ると、答えが残っている113名のうち89名(79%)です。

「地方には来てくれないだろう」と最初から募集をあきらめてしまうには、もったいない数字だと思います。

3. ただし、地方を「希望」に書く人は約3割

一方で、「希望勤務地」の欄を見ると印象が変わります。答えが残っていた1,006名の内訳です。

希望勤務地の書き方人数割合
場所は問わない(「全国」「どこでも」など)154名15.3%
地方の道県を含む149名14.8%
三大都市圏だけ559名55.6%
都市部を希望(「街がいい」など)90名8.9%
どちらとも読み取れない54名5.4%

※三大都市圏=東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪・京都・兵庫として数えています。

地方の道県や「どこでも」を挙げた方は合わせて303名(約3割)。残りの多くは、東京・大阪・京都などの都市部を書いていました。

さらに、「引っ越しOK」と答えた方で希望勤務地も残っている622名に絞っても、

地方の道県や「どこでも」を挙げた方:220名(35%)
都市部だけを挙げた方:376名(60%)

でした。つまり、「引っ越しはできる」と「地方に行きたい」は別のことです。多くの方は、最初に思い浮かべる勤務地として都市部を書きます。ただ、引っ越し自体はできると答えているので、条件や暮らしのイメージが合えば、地方の求人も十分に選択肢に入ります。

逆に言えば、希望勤務地の欄だけで候補者を絞り込むと、引っ越しできる方の多くを最初から見落とすことになります。そして、地方の求人を「選んでもらう」ためには、その場所で働いて暮らす姿が求人から想像できることが欠かせません。

4. 来てもらうための条件——寮・車・暮らし

では、何があれば地方を選んでもらいやすくなるのか。面談記録の中から、住まい・移動・暮らしに関わる答えを見てみます。

① 寮:「必須」は1%。でも引っ越しOKの人の7人に1人が「あれば」と答えている

「寮がなくても大丈夫か」の欄に答えが残っていた1,057名の内訳です。

寮についての答え人数割合
寮がなくても大丈夫853名80.7%
なくても大丈夫だが、あればうれしい46名4.4%
寮があった方がいい・寮を希望119名11.3%
寮がないと困る10名0.9%
どちらとも読み取れない29名2.7%

「寮がないと困る」という方は1%にも届きません。寮がないから応募が来ない、ということはあまりなさそうです。

ただし、寮を希望した方(「寮がないと困る」を含む129名)のうち102名は「引っ越しOK」の方でした。引っ越しOKの方に限ると、寮を希望する方は7人に1人(14%)になります。引っ越しを前提に考えている方ほど、住まいのことを気にしているということです。遠くから来てもらう地方の求人ほど、住まいの情報がそのまま効いてきます。

寮がない場合でも、借り上げの住まいを用意できるか、家賃補助があるか、敷金・礼金などの初期費用を会社が持つか、といった住まいの手当てを書いておくと、寮の代わりになります。

② 車:免許「あり」は4人に1人

運転免許の欄に答えが残っていた446名のうち、「あり」は111名(25%)でした。「なし」が238名(53%)、外国の免許だけと読める答えが78名(17%)です。

駅から遠い施設や、買い物に車が要る場所では、車がない前提で暮らせるかどうかが判断の分かれ目になります。送迎があるか、寮から職場まで歩けるか・自転車で行けるか、買い出しのときに乗せてもらえるか。こうした情報は、求人に書いていないと候補者からは見えません。

③ 暮らし:転職理由の1割に「田舎」「不便」「買い物」

転職理由が記録に残っている778名のうち、84名(11%)は、理由の中に「田舎」「不便」「買い物」「交通」「遠い」「都会」といった、場所や暮らしに関わる言葉が入っていました。うち47名は「田舎」という言葉そのものです。

来てもらえるかどうかと同じくらい、来たあとに暮らし続けられるかが問われている、ということだと思います。入社前に暮らしの様子が分かっていれば、入社後の「こんなはずではなかった」を減らすことにもつながります。

5. 地方の旅館・ホテルが求人に書いておきたい7つのこと

ここまでの記録を踏まえて、地方の旅館・ホテルが求人票や会社紹介に書いておきたいことを7つにまとめました。どれも、候補者が「ここで暮らせるか」を判断するための材料です。

項目書いておきたいこと
① 住まい寮・社宅の有無、個室か相部屋か、家賃と光熱費の自己負担額、家具・家電・Wi-Fiの有無。寮がなければ借り上げ・家賃補助・初期費用の負担
② 通勤住まいから職場までの距離と手段、送迎の有無、車が必要かどうか
③ 買い物・病院最寄りのスーパー・病院・駅までの距離、買い出しの送迎や社用車を使えるか
④ 冬のこと雪の時期の通勤方法、暖房費の扱い、冬の装備で会社が用意するもの
⑤ 休み年間休日、連休が取りやすい時期(繁忙期・閑散期)、まとまった休みの取り方
⑥ 引っ越し代入社時の交通費や引っ越し代を会社が負担するか、いくらまでか
⑦ 職場の人外国人スタッフがすでに働いているか、生活面で相談できる担当者がいるか

都市部の求人と同じ書き方のままだと、候補者は「通勤は?」「買い物は?」が分からないまま、知っている都市部の求人を選びがちです。不便な点も含めて先に書いておく方が、納得して来てくれる方に出会いやすくなります。

6. 面接で「引っ越しOK」の中身を確かめる

「引っ越しOK」の一言だけでは、分からないこともあります。面接では、次のようなことを具体的に聞いておくと安心です。

  • いつから引っ越せるか:いまの住まいの契約や、解約にかかる費用の関係で、すぐには動けない方もいます
  • 誰と住むか:家族やパートナーと暮らしている方は、相手の仕事や学校の事情で引っ越しの時期や行き先が変わることがあります
  • 車なしの暮らしをイメージできているか:通勤と買い物の手段を、本人と一緒に確認しておく
  • 寒さや雪の経験:冬の暮らしについて、写真などで具体的に伝えておく

あわせて確かめておきたいのが、日本語でどこまでやり取りできるかです。地方の旅館・ホテルでは少人数で現場を回すことが多く、電話やフロントでのやり取りを任せる場面も出てきます。弊社が以前まとめた面談500人分の記録では、JLPTの級と実際の会話力は一致しませんでした。面接での会話の確かめ方は、下の資料にまとめています。

まとめ

弊社の面談記録を数えて分かったことを、まとめます。

  • 引っ越しの可否が残っている1,201名のうち、74%が「引っ越しOK」(宿泊・飲食の希望者でも75%)
  • ただし、希望勤務地に地方や「どこでも」を挙げた方は約3割。引っ越しOKの方でも6割は都市部を希望に書いていた
  • 寮が「必須」の方は1%。ただし引っ越しOKの方の7人に1人は寮を希望している
  • 運転免許「あり」は4人に1人。転職理由の1割に、場所や暮らしの不便が出てくる

地方の旅館・ホテルにとって、外国人材は「来てくれない相手」ではありません。引っ越しはできる、でも最初に思い浮かべるのは都市部。その間を埋めるのは、住まい・通勤・暮らしを具体的に書いた求人です。

自社の立地で、どんな条件ならどんな方に来てもらえそうか。具体的な施設の様子をうかがえれば、弊社が面談でお会いしている方の実感をもとにご一緒に整理します。無料相談からお気軽にどうぞ。

よくあるご質問

地方の旅館・ホテルにも、外国人材は来てくれますか?
弊社の面談記録では、引っ越しの可否が残っている1,201名のうち894名(74%)が「引っ越しOK」と答えていました。宿泊・飲食の仕事を希望する方に絞っても75%です。ただし、希望勤務地に地方の県や「どこでも」を挙げた方は約3割で、引っ越しできる方でも6割は都市部を希望に書いていました。来てもらえる余地は大きい一方で、地方を選んでもらうための材料を求人で示すことが大切です。
寮がないと、地方での採用は難しいですか?
弊社の記録では、寮について答えが残っている1,057名のうち「寮がないと困る」という方は10名(1%)でした。一方で「寮があればうれしい・あった方がいい」という方が119名(11%)いて、その多くは引っ越しOKの方です。引っ越しOKの方に限ると、寮を希望する方は7人に1人でした。寮がない場合も、借り上げの住まい・家賃補助・初期費用の負担など、住まいの手当てを求人に書いておくことをおすすめします。
地方の旅館・ホテルの求人には、何を書いておけばよいですか?
仕事内容や給与に加えて、暮らしの情報を書いておくことをおすすめします。具体的には、住まい(寮・社宅の有無、自己負担額)、通勤(距離・送迎・車が必要か)、買い物や病院までの距離と手段、冬の通勤や暖房の扱い、休みの取り方、引っ越し費用の負担、職場で相談できる人がいるか、の7つです。弊社の記録では、運転免許を「あり」と答えた方は記入があった方の4人に1人でした。車がないと暮らせない場所なら、車なしで暮らせる手段を書いておくことが特に大切です。

※本記事の数字は、弊社の社内システムに登録された面談記録2,464名分(2023年〜2026年10月)のうち、各項目に答えが残っている方を2026年10月9日に集計したものです。項目ごとの人数は本文の表に記載しています。答えの分類(「OK」「なし」「東京のみ」などをどの区分に入れるか)は弊社で行いました。宿泊・飲食の方は、希望職種または職種の区分が宿泊・飲食の方として数えています。いずれも弊社の実績の範囲の数字であり、外国人材全体の傾向を示す統計ではありません。個人が特定される情報は含めていません。

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JLPTの級だけで判断しないための、日本語レベルの見極め方をまとめました。ホテル・飲食など業務別に必要な日本語の目安と、面接30分で会話力を確かめる「5つの質問」を載せています。地方の施設で、電話やフロントを任せられるかを面接で確かめるときにお使いください。

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