結論:JLPTの級と、面談で聞いた会話力は一致しませんでした。弊社が面談した500名を数えたところ、N1合格者の41%は会話ではN2台以下、逆にN3合格者の83%はN2台以上に聞こえています。さらに、実際に入社まで至った116名のうち22名(19%)は資格でいえばN3以下の方でした。書類段階で級だけを見て落とすと、話せる方をまとめて落としている可能性があります。

「日本語はN2以上でお願いします」——外国人採用のご相談をいただくとき、最初に出てくる条件のひとつです。社内で説明しやすく、書類にも書いてあるので、選考の基準として使いやすいのはよく分かります。

ただ、弊社では面談のたびに「資格の級と、実際に話した印象が違う」という場面に繰り返し出会ってきました。そこで、これまで面談してきた方の記録を実際に数えてみることにしました。この記事は、その結果をそのまま公開するものです。制度や試験の解説ではなく、弊社が自社の面談記録を集計して分かったことだけを書いています。

1. 何を数えたのか

弊社では面談を担当したメンバーが、面談後のメモの冒頭に「N2.4レベル」「N1後半」といった形で、会話を聞いた印象としての日本語レベルを書き残しています。試験の級ではなく、話してみた体感を小数まで含めて記録したものです。

この記録が残っている方のうち、ご本人が申告したJLPTの級も分かっている500名を対象に、次の2つを突き合わせました。

  • 申告されたJLPTの級(N1/N2/N3/N4)
  • 面談担当者が付けた会話レベル(N1台=1.0〜1.9/N2台=2.0〜2.9/N3台以下=3.0〜)

あわせて、その方が最終的に弊社経由で入社に至ったかどうかも照合しています。2024年から2026年9月までの記録です。

2. 同じ「N2合格」でも、話すと別々だった

まず、申告された級ごとに、面談での会話レベルがどこに散らばったかです。

申告された級人数会話はN1台会話はN2台会話はN3台以下
N1137名81名(59%)53名(39%)3名(2%)
N2268名71名(27%)183名(68%)14名(5%)
N383名12名(14%)57名(69%)14名(17%)
N411名2名7名2名

ずれは両方向に出ています。

  • N1合格者の41%(56名)は、会話ではN2台以下に聞こえた。読む・聞く力で合格されていても、話す場面では別の結果になることがあります。
  • N3合格者の83%(69名)は、会話ではN2台以上に聞こえた。うち12名はN1台です。書類では一番低く見えていた方々が、話すと上位に入ってきます。

JLPTは読解と聴解の試験で、話す試験は含まれていません。級が会話力とぴたりと重ならないこと自体は、考えてみれば自然なことです。ただ、選考の現場ではその級が「話せるかどうか」の代わりとして使われていることが多い、というのが弊社の実感です。

3. 級は、入社まで進むかを説明しなかった

次に、同じ500名について「最終的に入社まで至ったか」を見ます。まず申告された級ごとです。

申告された級人数入社割合
N1137名28名20.4%
N2268名66名24.6%
N383名22名26.5%

級の順に並んでいません。むしろN3の方がわずかに高いくらいで、少なくとも弊社の記録の中では、級は入社まで進むかどうかをほとんど説明していませんでした。

一方、面談での会話レベルで並べ直すと、きれいに順番が出ます。

面談での会話レベル人数入社割合
N1台(1.0〜1.9)166名51名30.7%
N2台(2.0〜2.9)301名65名21.6%
N3台以下(3.0〜)33名0名0%

会話レベルがN3台以下と評価された33名は、選考に進んだ方もいましたが、入社まで至った方はいませんでした。ただし33名は母数として小さいので、「絶対に決まらない」という意味ではなく、弊社の中ではそういう結果だった、という範囲の話として受け取ってください。

それでも、紙の上の級では差が出ず、話した印象では差が出たという向きの違いは、はっきりしていました。

4. 「N2以上」で切ると、入社した5人に1人を落とす

ここが、採用のご担当者にとって一番実務に効く数字だと思います。

弊社経由で実際に入社された116名の内訳を見ると、

116名のうち 22名(19%) は、JLPTの資格でいえば N3以下 の方だった。
そして、その 22名全員 が、面談での会話評価では N2相当以上 と判断されていた。

つまり、もし書類の段階で「N2以上」だけで機械的に足切りをしていたら、入社に至った方のおよそ5人に1人とは、そもそも会うことすらなかったことになります。しかもその全員が、会って話せばN2相当以上と判断された方々でした。

採用の現場では、応募が多いときほど書類で絞りたくなります。その気持ちはよく分かるのですが、日本語の級は絞るための線としては精度が高くない、というのが弊社の記録から言えることです。

5. 弊社が面談で見ている3つの軸

では、会話力は何を見れば判断できるのか。弊社で面談を多く担当しているメンバーに、どこを見て小数の評価を付けているのかを聞いたところ、次の3つでした。特別な手法ではなく、面接の中でそのまま使えるものです。

① 話すスピードが自然か

単語を知っているかどうかより、詰まらずに続けられるかを見ています。言葉を探して長く止まる、同じ言い回しに戻ってくる、といった場面が多いと、入社後に現場で指示を受けるときにも同じことが起きやすくなります。

② 場面に合った言葉を選べているか

敬語が完璧である必要はありません。見ているのは相手と場面に合わせて言い方を変えられるかです。お客様に話すときと同僚に話すときで、言葉が同じままになっていないか。接客や電話対応がある職種では、ここが後から効いてきます。

③ 質問と答えがかみ合っているか

3つの中で、一番差が出るのがここです。志望動機や自己紹介は準備してこられるので、ほとんどの方がすらすら話されます。差が出るのは、予定外の質問をしたときです。

「前職でいちばん大変だったのは?」と聞いて、大変だった話が返ってくるか。少しずれた答えが返ってきたときに、言い換えて聞き直すと通じるか。面接の中にその場で広げる質問を1つ入れるだけで、かなり見えます。

6. 明日からできる3つのこと

① 求人票の「資格要件」と「会話レベル」を分けて書く

弊社が受け取る求人票でも、「JLPT:不問」と書いてあるのに、別の欄には「日本語会話レベル:N2相当以上」と書かれているものが珍しくありません。この2つは別のことです。混ざったままだと、資格を持たない方が自動的に除外されてしまいます。「資格が必要なのか、話せれば良いのか」を社内で一度決めておくと、紹介できる方の幅が変わります。

② 足切りを「級」から「短い通話」に置き換える

書類で級を見て落とす代わりに、10分の通話を一次選考にする方法があります。時間はかかりますが、落とす精度は上がります。弊社では面談時にこの会話確認を行っており、ご紹介の際に会話の印象をあわせてお伝えしています。

③ 「N2以上」が誰の要件なのかを確認する

その基準が、現場が本当に必要としている水準なのか、過去の求人票から引き継がれてきた文言なのかを一度確認してみてください。実際にご相談の中で理由をうかがうと、「前任者のときからそうなっている」という答えになることが少なくありません。

なお、在留資格の種類や職種によっては、日本語能力が要件として問われる場合があります。「資格は一切不要」という意味ではありませんので、個別の可否については提携する行政書士と連携してご案内します。

まとめ

弊社の面談500名分を数えて分かったことは、シンプルでした。

  • JLPTの級と会話力は、両方向にずれる(N1の41%は会話でN2台以下、N3の83%は会話でN2台以上)
  • 級では入社率の差が出なかったが、会話レベルでは差が出た
  • 入社した116名のうち22名(19%)は資格でいえばN3以下で、その全員が会話ではN2相当以上だった

日本語の基準を下げましょう、という話ではありません。基準を「級」ではなく「会話」で持ちませんか、という提案です。採ったあと現場で困るかどうかを決めているのは、紙の上の級ではなく、話が通じるかどうかだからです。

自社の求人票の日本語要件が実態に合っているか、どこまで幅を広げられそうか。具体的な職種をうかがえれば、弊社が面談でお会いしている方の実感をもとにご一緒に整理します。無料相談からお気軽にどうぞ。

よくあるご質問

JLPT N2があれば、業務に必要な日本語会話はできますか?
弊社が面談した500名の記録では、N2合格者268名のうち面談で会話がN2相当と評価されたのは183名(68%)でした。27%はそれより上に、5%はそれより下に聞こえています。JLPTは読む・聞く力を測る試験で、話す試験は含まれていません。級はひとつの参考にはなりますが、会話ができるかどうかは別に確認することをおすすめします。
書類選考で「N2以上」を必須にするのは有効ですか?
弊社の記録では、実際に入社まで至った116名のうち22名(19%)はJLPTでいえばN3以下の方でした。その22名は全員、面談での会話評価ではN2相当以上と判断されています。資格で一律に足切りをすると、話せる方をまとめて落としてしまう可能性があります。ただし在留資格の要件や社内規程で級が必要な場合はありますので、まず自社の要件が資格なのか会話力なのかを切り分けることをおすすめします。
面接で日本語の会話力をどう見ればよいですか?
弊社の面談では、(1)話すスピードが自然か、(2)場面に合った言葉づかい・敬語が使えているか、(3)質問と答えがかみ合っているか、の3点を見ています。とくに(3)は、用意してきた自己紹介では差が出ず、予定外の質問をしたときにはっきり出ます。志望動機のような準備できる質問だけでなく、その場で少し話を広げる質問を1つ入れてみてください。

※本記事の数字は、弊社の社内システムに記録された面談メモのうち、会話レベルの評価とJLPTの申告級の両方が残っている500名分(2024年〜2026年9月)を2026年9月22日に集計したものです。「入社」は弊社経由で入社日が確定した方を指します。会話レベルは弊社の面談担当者が会話の印象で付けた社内の評価であり、公的な指標ではありません。JLPTの級はご本人の申告に基づきます。いずれも弊社の実績の範囲の数字であり、外国人材全体の傾向を示す統計ではありません。個人が特定される情報は含めていません。在留資格の要件判断や申請手続きは行政書士の業務範囲となるため、必要な場合は提携する行政書士と連携してご案内します。

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